光「波長」のことを考えてみる

水草育成に求める光
アクアリウムはおおきく海水と淡水の二分されます。マリンアクアは、特に繊細な珊瑚や無脊椎動物を育成する分野では照明への意識が大変強く、専用製品の持つ概念とクオリティは非常に高いです。一見、海らしさを演出するかのようなブルーの照明は、実は育成種によって大変シビアに調整されています。それは水深により淘汰された太陽光が届く海底で進化し、種類によって異なる安定した光が求められるからです。
では淡水の水草育成はというと水中といっても水深は浅く、ダイレクトな太陽光を浴びて光合成をし、二酸化炭素を吸って酸素を吐く。ただし、それぞれ生息地の環境(気温)と空気の代わりの水質の違いはありますが、基本的な新陳代謝の仕組みは水上植物と同じです。ということはそう、水草の求める光は太陽光そのものです。
水草を育てる照明は、以前は蛍光灯やメタルハライドランプが主流でした。高価な水草専用もありましたが家電や店舗の照明用でも環境を整えた水槽に設置してタイマー管理すれば水草はちゃんと育ってました。それはなぜでしょう?ちょっと極端な解釈ですが、蛍光灯やメタルハライドランプは「太陽と似ている」からです。

太陽と光合成のことを知ろう!
「太陽と似ている」というのは極端ですが、正確には太陽光との共通点があるからです。それは蛍光灯やメタルハライドランプの光は「連続波長」なこと。前置きが長くなりましたがここから本題「波長」についてです。ではまず基本となる太陽光についてです。
※概略がわかればよいので、下記のグラフや詳しい内容は簡略化しています。

▼電磁波スペクトル
光は電磁波の一種。たしか学校で習った気が…、そう「電磁波スペクトル」上に存在してます。ラジオやテレビの電波と同じ種類なのっです。思い出しましたか?そして、UV(紫外線)とIR(赤外線)の間にあるのが「可視光」。つまり人が光と色を認識している部分にあたります。

▼太陽光スペクトル
太陽光が放つ可視光の波長(スペクトル)です。青い部分をピークにゆるやかな山となってますが、この波長が繋がっているラインが「連続波長」です。当たり前ですが可視光にあたる色調を広い範囲でカバーしてます。水草(植物)にとってはこの太陽光スペクトルから生育に必要な波長(色の部分)を吸収して生育しています。それが光合成です。
※グラフの解説/縦軸の「相対発光強度」とは光の一番高い強さを1.0とした場合の軸で、光の強さそのものを表しているわけではありません。

▼色素の吸収スペクトル
では、光合成は可視光スペクトル内からどの波長(色の部分)を利用しているのでしょうか。光合成に必要な色素にはたくさん種類があります。その中でも水草(植物)に特化すると主に「クロロフィルa」「クロロフィルb」「カロテン」「ルテイン」です。どの色素も青の波長で重なり最も高く、ついで赤の波長域が高い凹型となってます。
※グラフの解説/縦軸は波長に対して吸収量を表したもので、相対発光強度ではありません。
※余談/珊瑚や無脊椎動物の光合成は共通点もありますが植物や水草とはまったく違う波長も吸収しています。水深で淘汰された波長のみで進化したため、不要な波長はかえって毒になってしまうこともあります。

 
▼色素の吸収範囲
光合成の主要色素となるのが「クロロフィルa」、次いで補助色素の「クロロフィルb」。これがいわゆる「葉緑素」です。このクロロフィルabは成長・生育に必要な受光容態となります。しかしレイアウト水槽では赤系(赤・オレンジ・黄)水草も鮮やかに育成しなければなりません。赤系水草の本来もつ色合いを引き出すために必要な受光容態は「カロテン(βカロティン)」「ルテイン」。クロロフィルで補えない470~500あたり(水色~緑あたり)の波長も必要になります。このグラフは色素の吸収範囲がよりわかりやすくするために波長色を入れてみました。太陽光スペクトルを下敷きにしているのは色の範囲の目安のためにです。

 ▼光合成作用スペクトル
そして私が重要視しているのが「光合成作用スペクトル」。これは葉に光を当てた時の光合成による吸収スピードを表したもの(いろんな植物の平均値)。光合成で吸収しやすい波長を知るためのグラフだと思ってください。ご覧の通り色素の吸収とは青と赤の比率が逆です。光合成の作用は赤の反応が最も高いことがわかります。
※余談/農業(水耕栽培等)等で極端に赤色LEDを利用するのはこのデータからです。
※グラフの解説/「太陽光スペクトル」同様、縦軸の「相対発光強度」は光の一番高い強さを仮に1.0とした場合の軸で、光そのものの照度を表しているわけではありません。

 
まとめ/水草育成に必要な波長を知るには一見「色素の吸収スペクトル(色素の吸収範囲のグラフも)」が一番理屈にあっているように思えますが(実際、水草方面ではよく取り上げられる)、光合成の作用は赤をピークに幅広く反応しています。最初にふれましたが植物や水草は直接太陽を浴びて成長していますので、自然下同様に植物のもつ色合いを鑑賞する意図からも太陽光のスペクトルを目指すべきなのでしょう。しかし蛍光灯やメタルハライドランプの時代を経て現在はLED照明が主流。はたして水草レイアウト水草に適した光(波長)はどう再現すすべきなのでしょうか?

ここまでの基本を踏まえ、次は『水草育成の照明』について検証します。